溺愛はいらない。
『りぃ?』
「ん、ああ…今日は同僚と飲んで来るから、昨日よりは遅くなると思う。」
『男?』
あ、今、機嫌下がったな。
肩にかかる重力と、耳元にかかる声色で察する。
昨日、再会したばかりと言うのに、人間というものは恐ろしいもので、5年というブランクがあっても、彼の小さな仕草や態度で色んなことを察してしまう。
「違う。女の子…2人で行って来る。」
『2人なんて、大丈夫なのか?男に引っ掛けられたり––』
「大丈夫だから。行きつけの居酒屋さんに行くだけだから。…ちゃんとここに帰って来るから、ね?」
これ以上話していると、ついて来ると言い出しかねない芯を牽制するためにも、身体ごと芯の方へ振り向き、彼の首に腕を回した。
すると、間を空けずに、背中に回された逞しい彼の腕。
『帰る時、連絡して。』
「うん。」
『雨だったら、迎えに行く。』
「えっ」
芯の言葉に、思わず顔を上げると、彼に隙を突かれて唇に降ってきた熱。
ちう、と吸い込まれるような接吻を交わすと、彼は満足げに微笑んだ。
『俺から逃げるなんてバカなこと、もう2度と考えないようにしつけ直さないとな?』
なんて、朝っぱらからフェロモンたっぷり漂わせて言われたら、何も言い返すことなんてできなかった。