嘘は輝(ひかり)への道しるべ
真実へのみちしるべ
 梅雨に入り、雨の日が何日も続いている

 愛輝は大学の講義が終わりると、雨の中を寄り道する気にもなれず、そのまま家へと戻った。

 駐車場に祐介の車がある。
 めずらしく早く帰っているようだ。

 愛輝は、まだ祐介に真二の話をしていなかった。

 長雨のせいで、ジメジメとした薄暗い家の中を、愛輝は祐介の姿を探し歩いた。


 父拓真の部屋のドアの隙間から、祐介の話声が聞こえた。

 愛輝はノックをしようと手を掛けたが、祐介の言葉に手が止まってしまった。


「おじさん、今日は僕と愛輝の両親の墓参りに行って下さったんですね。僕が行ったら、すでに花が供えられていたので…」

祐介の言葉が聞こえたが、愛輝には意味が解らなかった。


「ああ。もう二十年になるか? 命日には必ず行かせてもらっているよ… お前はアメリカだし、誰も行かないようじゃなあ……」


「ありがとうございます。きっと両親も喜んでいると思います。」


「喜んでいるか…… 私はあの日の事を忘れられんよ。お前達を残して無念だったとしか思えんよ……」

 拓真は、さっきより激しくなった雨を窓からじっと見ていた。 


「僕はまだ幼くて、よく覚えていないんです。突然両親が居なくなって、愛輝と離れ離れになった記憶だけが残っています。何があったのか? どうして僕達兄弟が離れ離れになったのか? 教えて頂けませんか?」

 祐介がソファーに腰を下ろしたまま、拓真の背中に向かって言った。


「そうだな…」

 拓真はソファーに腰を下ろし、テーブルに用意されていたティーカップに手を伸ばした。


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