嘘は輝(ひかり)への道しるべ
「あゆみ……」
真二の顔が強張る。
「真二さん、そんな顔しないで。今日はあなたに謝り来たのよ……」
あゆみは、人に謝るようなひた向きさはなく、堂々と真二に近づいてきた。
「えっ」
真二が驚いた顔で、あゆみを見た。
「事務所の社長に言われたの…… 愛輝さんの父親を怒らせたら、この世界では生きて行けないと…… 売れたければ、愛輝さんとあなたの事は忘れろ、って言われたわ。その代わり、あなた達に近づかなければ、CM契約と連続ドラマの出演を約束するって言ってくれたわ」
あゆみの言葉に、真二は祐介の事を思い出した。
「あの人……」
真二が独り言のように呟いた。
「愛輝さん、一体何者なの? でも、もういいわ。私はどんな事をしても、芸能界で成功したいの。だから、あなたの事は忘れるわ。色々とごめんなさい。あなたのへの気持ち事以上に芸能界で光りを掴む事が大事なの! それじゃあね」
あゆみは颯爽と歩き、ドアノブに手をかけたが、もう一度くるりと振り向いた。
「今日の真二さんの歌、私の心にも響いたわ。さすがに敵わないって思った。愛輝さんにもごめんなさい、って伝えておいて……」
「おい! 自分で謝れよ!」
リョウの言葉に、あゆみは軽く手を振り、颯爽と出て行った。
「すげー。愛よりも仕事ってこういう事いうんだな… 光りって何なんだろうな?」
隆が腕を組むと、遠くを見て言った。
「掴みたい光りは、人それぞれ違うんだろうな? ただ一つ言える事は、光りは掴んでからのほうか大変だって事だよ……」
真二が自分に言い聞かせるように言った。
「なあ、真二?」
リョウが、深刻な顔を真二に向けた。
「何だ?」
「今まで悪かったな…」
「あゆみの事ならもういいよ……」
「その事もだが…… お前の曲、勝手に使った事だよ」
「今更何を言っているんだ。お前のその声とルックスのおかげで、俺の曲が売れたのは間違いない。お蔭で、のどかの手術出来たんだから。今は、お前に感謝しているよ」
真二は手に持っていた、ペットボトルの蓋を開け口に運んだ。
「真二、本当に済まなかった……」
リョウの何か思いつめたような遠くを見る目に、真二は何だか胸騒ぎがした。