嘘は輝(ひかり)への道しるべ
 愛輝は、コンサートチケットのお礼を、のどかに言って無かった事に気付き病院へ向かった。


 廊下の手すりにつかまりながら、のどかがゆっくりと歩いている。

 のどかは愛輝に気付き手を振った。


「さっき、お兄ちゃんが来たのよ!」


「えっ。真二くんが…」

 愛輝の鼓動は大きく音をたて、苦しくなる胸が息をする事を求めるように辺りを見回した。


 しかし、のどかの言葉に、まだまだ届かない思いである事を知らされる。


「もう、帰っちゃったわよ。そうそう、愛輝さんに渡してくれって頼まれた物があったんだ!」



 のどかが、手すりにつかまりながらゆっくりと病室へ向かった。

 愛輝は焦る思いを、ぐっと押さえて、のどかの横に並んで歩いた。



 病室のベッドサイドの引出から、のどかが一通の手紙をに出した。


 真二からだ。


 愛輝は早く読みたい気持ちと、何が書かれているのか知る事への不安に手紙を広げた。



『愛輝へ… いろいろと心配かけて済まなかった。

 あの時は黙って愛輝から離れる事しか出来なかった。俺に愛輝の側に居て守る力が無くて…… 本当にごめん… 

 愛輝の兄さんに助けてもらった事は本当に感謝している。愛輝が大変な時、側に居てやれなくてごめん…… 

 ヒカリの記者会見、堂々としていて、本当に綺麗だった。

 俺はリョウとバンドのメンバーと一緒にアメリカに行く。向こうでもう一度勉強して、又日本でやり直すつもりだ。一年で戻る。

 でも、今の俺に愛輝に待っていて欲しいとは言えない。俺を信じてくれてありがとう。愛している……  真二』


「アメリカって……」

 手紙を読み終えた愛輝は呆然として言った。


「愛輝さん知らなかったの? 今夜の便だって!」


「えっ。今夜…」

 愛輝の顔は一瞬にして青ざめた。



「もう大丈夫よ。お兄ちゃん、最近は記者の人も居なくなったって、だから病院に来られたのよ。今なら間に合うわ! 早く行って、ちゃんと気持ち伝えて来て!」


 のどかが必至で叫ぶ声に、愛輝はこのままでは絶対後悔すると思った。


 今、真二に逢わなければ…… 会いたい……


「うん」

 愛輝が急いで立ち上がる姿に

「全く、本当に世話のかかる人達ね… 早く行って!」


「ごめん…… のどかちゃん……」


 愛輝はのどかに謝ると、病室を飛び出した。
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