嘘は輝(ひかり)への道しるべ
 ヒカリの引退騒ぎに、いつのまにかリョウの話題も消えていた。

 ヒカリの引退は、後から様々な噂がながれ、恋人がいたのではないか? 
 正体は誰なのかと騒ぎが絶えない中、残された仕事を、精一杯こなしていた。


 ヒカリの入るスタジオには、連日記者が詰めかけていたが、愛輝の姿で仕事に向かう事で、誰も正体には気付かなかった。


 控室に入る廊下で、あゆみのCMが映る画面に目を向けた。

「最近、テレビでよく見かけるよね?」

 美香が、愛輝の送った視線に気付き声を掛けた。


「うん……」


「気になる?」


「えっ…… べつに……」

 愛輝は曖昧な返事をした。

 気にならないと言ったら嘘になる。

 やはり、連絡の無い真二への胸の痛みを思い出してしまう。



「まあ…… 確かに、可愛いとは思うけど、光りを持っていないんだよな……。今は、事務所の力でテレビに出られているけど、そんなに長くは続かないよ……」


「美香ちゃん…… そんな事言って……」


 愛輝は口にしながら、気にしている事はそんな事では無いと言いたかったが……


「でも、リョウと真二は違う。ちゃんと人の心を掴む光を持っているから…… あの声とマスクに真二の曲があれば、間違いないよ」

 美香が窓の外に目を向けて言った。



 後ろから足音が近付き、振り向くと祐介が立っていた。

 あゆみのCMに目をやった祐介の顔がニヤリとしたのは気のせいだろうか?


「詳しい事は、いつか真二から聞けばいいが、愛輝と真二の会話をあゆみが盗み聞きしたらしい…… 全て、お前の為だったんじゃないのか?」


「えっ…… 私のため……」

 愛輝の胸は、ただただ苦しい鼓動を打った。


「ああ…… これから、真二も大変だろうが、あいつなら大丈夫だろう……」


「うん。私も、信じて待つわ。それにしても兄さん、何でも知っているのね? 兄さん一体どんな力を持っているの?」


「まさか…… ただの偶然だろ」


 そう言った祐介の顔は、ニヤリと窓の外へ向けられていた。


 愛輝は大きく息を吸うと、ヒカリとしての最後の仕事へ足を運んだ。
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