黒の村娘といにしえの赤鬼
第七章 溺愛されて、惹かれあって
「え、時雨!?」


読んでいた書物から目を離し、彼に目をやる。
こうして会うのはどのくらいぶりだろうか。


「ほう…着物に紅にかんざし…中々似合っているじゃないか」
「毎日毎日ありがとうございます。おかげさまで見た目くらいは姫らしく見えますか」

私は皮肉っぽく言って時雨を見た。
その表情が気に入ったのか彼は不意に頬に口づけをしてきた。


「…っ!」

口づけされたところから段々熱を感じるのが分かる。
私は顔を赤くしながら至近距離の時雨を見るとにやっとしてきた。


「ふっ。やはり俺の気が変わったようだ。お前は俺の花嫁に相応しい」

そう言いながら今度は自分の肩に私の頭を乗せて撫でてくれる。
初めて会った時とは大違いだ。


「わ、私だって毎日勉強してるし!誰かさんが忙しいみたいだから勉強が捗る捗る…」
「それで息抜きに右京と紫苑といろいろしてたわけか。俺という許嫁がいながら」
「そんなわけ…!いやらしいことなんてしてませんよーだ」
「ふふ。冗談だ」


あれ?

時雨ってこんな人だったかな?

笑った顔とか何だか…。

私は吸い込まれるように自然に時雨の頬に手を当て、自ら口づけをした。


「っ!?」


すると時雨は顔を赤らめて視線を逸らす。


「なんだ急に…。お前そんな積極的だったか…?」

「!?」


時雨の言葉で我に返ると私まで急に恥ずかしくなってきた。
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