ENGAGE RING 〜狂気的なホテルオーナーと激甘な御曹司に愛されて〜
「ご、ご無沙汰しています、慧さん」


 私が腰を落としながらそう言えば『何、その口調』と、あははっと笑い飛ばす慧さんは、それすらもとても気品がある貴公子だ。


「ーーやっぱり、理恵だった。
絵に描いたような美女がそこにいると思ったら」


 お、お世辞にもこっ恥ずかしいことを言わないで欲しい、と私は動揺を隠しつつ「ご冗談を」と苦笑した。


「で、どうしてここにいるの?」


 敢えて目を逸らしているため、怒っているのかそれとも笑っているのかは不明だが、先ほどの穏やかな空気とは一変したので、私は『それは……』と言い淀む。


「いや、聞き方を間違えたね。
君は高宮の御曹司とどういった繋がりが?」


 もうここまで来たら隠し通さぬまい、と私は決心して「昔の教え子です」一糸纏わぬ真実を告げる。


「そう……」


 悲しげな声を上げる彼の声色に、何とも言えぬ罪悪を感じてしまう。


「慧様、ここにいらっしゃいましたかーー!
なぜ、会場に出る扉の前に……」


 するとその時、彼の秘書である男性の声が聞こえたーー。


「御免なさい。……私少し、御手洗いに」


 バタンッという豪快な音を立ててしまいながらも、私は逃げるように会場から抜け出し、化粧室に駆け込む。


 なぜだろう、怒られる様子もなかったのにも関わらず、嫌な予感がしたんだ。

ーーそして私の勘は思いの外、よく働く。

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