七月八日のながれぼし
「ありがとう」
「え?」
「ミツルを思ってくれて、ありがとう」
予想もしていなかった言葉に思わず彼の方を向く。
プールの水面に視線を向けているとばかり思っていたミツは、あたしのことを見つめていた。
「僕が変わったことで、可哀想と言う人がいれば喜ぶ人もいた。記憶がなくなって過ごす1年間、僕はミツルのことがなにもわからなかった」
今の自分を否定されないけれど、その分昔の自分に向けられた好意がなかった。
そのことによる不安から、ミツはあたしといることを望み、他の人といる姿を見たことがなかったのだと今になってようやく知る。
「だけど君は、今の僕とはじめて会った時、泣いたでしょう? 昔の僕に対する執着を見せてくれたことが嬉しかった」
確かにあたしは、ミツを見た瞬間涙をこぼしてしまった。
ミツルの影が見えなくて、同じ顔をした他人みたいで、心がまぶたから落ちていったんだ。
そしてあたしはその場から逃げ出して、落ち着いた頃に追いついた彼に互いの呼び方についての話題を持ちかけた。
「涙が星のように美しくて、想われていた自分が妬ましくなった」
恥ずかしげもなくそんなセリフを口にして、彼は眉を下げて微笑む。