今 顔を上げたら、きっと。
「鉄平、コンビニ入れる?」

「あ、はい。いいで…」

 ウインカーをあげて、理世に視線を向けた鉄平は、続く言葉を失った。その代わり、ゆっくりと理世の頬に手を伸ばす。

「なんて顔、してんですか……」

 今、自分がどんな表情をしているのか、理世自身も判らなかった。どうしようもなく不安で、今すぐにでも逃げ出したかった。

「帰りたくないって言ったらどうする?」

「喜ぶ」

 即答されたその答えに、理世も思わず笑ってしまって、その拍子に涙が頬に落ちた。

「嬉しいけど、だめです。俺、今の理世さんといたら正気保てそうにないから。早く帰って休んでください」

 きっぱりと言い切って、前を向いた鉄平に、理世は畳み掛けるように告げた。

「来るんだって」

 誰が? と問いかける鉄平の眼差しが、理世に突き刺さる。

「寺岡先生、今夜来るって」

 青へと色を変えた信号機。鉄平はコンビニに入らずにそのまま車を転回させた。
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