晴れのち曇り ときどき溺愛
「春臣。久しぶりだな」

「隆二。久しぶりではないだろ。つい最近会議で会っただろ」

「こういうプライベートでは久しぶりだよ」


 そう言って声を掛けてきたのは先ほど見かけた『本物の進藤隆二』さんだった。その横には甘えるように腕を絡めた『同僚の進藤絵里菜』さんもいる。パーティ会場を歩く美男美女の二人はその場に居るだけでシャンデリアの光が増えた気さえする。二人が兄妹だというのを知っていても見紛うほどの美しいカップルの女性は下坂さんの隣にいる私を見つけると軽く手を振った。


「梨佳さん。お疲れ様です。キャー。そのドレス。可愛いです。いつもスーツ姿しか見たことないから新鮮で、春くんも絶対に嬉しいよね。梨佳さんはこんなに可愛いのに恋人もいないのよ。お兄様が梨佳さんと結婚してくれたら、梨佳さんは私のお姉様になるのよね。それがいいわ」


 そういう絵里菜さんはどこのグラビアから出てきたのかと思われるくらいに背中が開いた真っ赤なドレスを着て、銀色のピンヒールを身に着けている。私なら絶対に転ぶと思われるピンヒールも吐き慣れているようで、スニーカーで歩くように優雅に歩いていた。

 首元には大ぶりのダイヤのネックレスが絵里菜さんの可愛らしさを引き立てている。私は…美容師さんの力で少しはマシだけど、絵里菜さんの足元にも及ばない気がした。

< 229 / 361 >

この作品をシェア

pagetop