晴れのち曇り ときどき溺愛
「ありがとうございます」

「一緒に居たら、圭吾みたいに色々と言われるかもしれないけどいい?」


 下坂さんが言っているのはこの会場に入ってきてからずっと感じていた視線の事だと思う。さっき長田さんが言ったように下坂さんの横にいる私が誰かということで視線を向けられている。気にならないと言えば嘘になるけど、今は仕事の一環でここにいる。


「美容室まで行ってドレスまで着たのに勿体ないですし、仕事ですから大丈夫です」

「友だちだけでなく今後の取引をしたい先も来ているので挨拶はしておきたい。そう言えば、何も食べてないよね。先に何か食べようか。嫌いなものはある?なかったら俺が何か取って来るよ」

「一緒に行っていいですか?」

「いいよ。じゃ、一緒に行こう。ここのローストビーフはかなり美味しい。食べるだけの価値はある」

「楽しみです」


 シャンデリアの下、一緒に美味しい料理を食べながら話したのは仕事の事ではなかった。どこの大学を出て、どのようにして今の会社に入ったのか。それはあのお見合いの時に聞いた話と一緒だった。


「お見合いの時に話してくれてのって本当の事ばかりだったのですね」

「名前以外は全部。本当の俺」
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