魅惑への助走
 「大学でも、大学祭とかあったんじゃないの?」


 「うーん。模擬店で人生相談とか一日法律相談とかやらされて、あまり自由時間がなかった」


 「そうだったんだ……」


 私は……大学一年次は義理で顔を出したけど。


 二年以降は参加は任意だったため、学祭期間中サボっていた。


 その後は毎日の生活でいっぱいいっぱいで、お祭りに顔を出す機会もなく。


 この町に引っ越してきたのは去年で、去年の今頃もこの辺りを通りかかって、夏祭りが開催されているのを知った。


 しかし独りぼっちだったので、ざっと通り過ぎただけで何かを楽しむこともなく。


 「ヨーヨーすくいやってみる?」


 「まず何か食べたいな」


 子供の頃は五百円もあれば、あれこれ買い物ができたはずなのに。


 今はお好み焼きやたこ焼きは、一パック五百円とかで……。


 「高いよね。ここではつまむ程度にして、花火大会終わったら居酒屋にでも行く?」


 「賛成」


 とりあえずは腹ごしらえのために、お好み焼きとたこ焼きを一パックずつ購入し、半分分けにして食べた。


 飲み物は自動販売機でペットボトルを購入。
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