魅惑への助走
 「無事飼い主に巡り会えたのはよかったけど。上杉くんの家には水槽とかあるの? そしてエサも」


 「……何もない」


 花火大会が終わったら、22時まで開いているホームセンターに飼育道具一式を買いに行くことにした。


 ということは、花火の後はゆっくり二人で過ごせない?


 小さなビニール袋に入れられた金魚を持ったまま、夜遅くまでは歩いていられないだろうし。


 お祭りの後、何となくロマンティックなムードになって、二人の関係がもうちょっと前に進んでもいいかななんて期待していたのに。


 今夜もどうやらそれは叶わないと悟り、少し寂しさに包まれた。


 「そろそろ日没かな」


 ようやく太陽が沈んだようだ。


 しかし辺りが暗くなり、打ち上げ花火に適した時間帯になるには、まだ一時間くらい要する。


 「もうちょっと露店を見て回る? それとも花火の場所取りって必要かな?」


 「ギリギリでも大丈夫」


 花火は神社の裏の河原にて開催される。


 打ち上げ場所に近い辺りは混み合うので、事前に下見をして、少し離れた所に穴場を見つけておいた。
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