魅惑への助走
 「お面買ってみる?」


 「買ったら武田さんが付けるんだよ」


 まだ花火の打ち上げまで時間があるので、お面売り場の前でふざけ合っていた。


 有名アニメキャラのお面を手に取り、無理矢理上杉くんの顔の前にかざした時だった。


 「あれっ、もしかして……」


 後ろから女の人の声がして、上杉くんに呼びかけた。


 そっちのほうを見ると、私より背の高い、浴衣姿の綺麗な女の人が佇んでいる。


 「あれっ、もしかして……ミキ?」


 「久しぶり!」


 上杉くんはそのミキって女の人のほうへ駆け寄った。


 再会を喜び、笑顔で向き合う二人。


 周囲の雑踏にかき消されて、何を話しているのかまでは聞き取れないけれど。


 すごく盛り上がっている様子。


 ミキって人は、後ろにいる男女数名でこのお祭り会場を訪れていたらしい。


 しかも後ろの人たちもみんな、上杉くんと面識がある様子。


 大学時代とかの知り合いグループかな?
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