魅惑への助走
 「明美ちゃんってマジで、いい体してるよねー。有効活用しないともったいないよ」


 「か、片桐さんならば、有効活用してくれるとでも言うんですか」


 「あれ? その気になったかな?」


 「……」


 出方を窺う。


 「OK。後悔はさせないよ。撮影の際はあくまで業務用だから。本当の俺を教えてあげる」


 いつの間にか勝手に、私が承諾したことになっている。


 「……そっちがその気なら、花火パスしてもいいけど?」


 片桐のほうがすっかりその気なのだけど、私は……。


 こうやって自ら、危険を引き寄せるような行為を続けているのは……。


 「武田さん、待たせてごめん。……何やってるの?」


 思い描いたタイミングで、上杉くんが戻ってきた。


 私が執筆するシナリオならば、ここで「俺の女に何をする」と片桐を一発殴り飛ばし、私を奪うシーンだけど……。


 「あなたはどちら様ですか?」


 上杉くんは丁寧に、片桐に尋ねた。


 「あ? 俺は俺様だけど?」


 思わぬ邪魔が入り、片桐は上杉くんを睨みつける。
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