魅惑への助走
 「45分過ぎちゃった」


 ロスタイム(アディショナルタイム)に突入。


 思ったより短く、わずか二分間だった。


 相手がボールキープをして時間稼ぎをする中、ゴールを奪うチャンスはあまりない。


 刻々と時間は流れ、あと1プレーで試合終了の笛が鳴り響くと予想された時だった。


 日本代表の背番号10、司令塔が相手の守備網を切り裂いて突破を図った。


 今日はこれまでマークが厳しく、全然いつものプレーをさせてもらっていなかったけれど。


 相手守備陣が疲労の色を隠せないロスタイム、ついに勝負に出た。


 現地は夕方らしいけど、日本同様真夏なので、気温は30度を越えているとの情報。


 そんな暑さの中、相手チームの選手もかなり消耗していて、彼の動きについていけない。


 ついに相手ゴールキーパーと一対一になった。


 たまらずキーパーは、彼にタックルを食らわせて倒す。


 「ひどい! 吹っ飛んだじゃない」


 「これはイエローカードが出る。そしてPKをゲットだ」


 上杉くんの言った通り。


 PKとの判定で、司令塔は見事それを決めて1-1、追いついた!


 「やったー!」


 テレビの前で上杉くんとハイタッチをして喜んでいたら、程なく試合終了。


 引き分け。


 とはいえアウェイの地で貴重な「勝ち点1」を手にすることができた。
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