魅惑への助走
 番組終了後は、延々とコマーシャル。


 退屈なので、何か話そうと頭の中で考えたのだけど。


 どうも思い浮かばない。


 ビールだけが減っていく。


 「ねえ」


 「ところで、」


 二人が同時に、何かを言いかけた。


 「ごめん、」


 「いいよ、武田さんが先に話して」


 「……ビールが減ってきたから、うちにある赤ワイン出そうと思うんだけど、飲む?」


 「うん、ワインは好き」


 ビール缶は500ml6缶パックだったけど、あっという間になくなってしまった。


 上杉くんが「あまり飲まないよ」っていうから安心していたら、予想したよりも飲んでいた。


 とはいえ自宅には、もらい物のワインなども常備しているので、それを提供することに。


 「はい、ワイングラス」


 グラスを手渡し、ボトルからワインを注いでいたところ、一滴はじけて飛んで上杉くんのTシャツにこぼれてしまった。


 「あ、ごめん!」


 急いでキッチンに走り、タオルに水を含ませて、こぼれたワインの痕を拭き取った。


 「これでしみにならないかな」


 「別によかったのに。どうせ安物なんだから」


 「血みたいで不気味じゃない?」


 そう答えた時だった。


 不意に至近距離で視線が重なったので、もう一度私のほうから唇を重ねた。
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