魅惑への助走
 ワインで濡れた紅い唇は、触れ合うだけで胸の鼓動を高める。


 「上杉くん……」


 キスの合間にせがむ。


 私が与える以上のことをしてほしくて。


 なのに上杉くんは遠慮がちに私のキスを受け入れるだけで、抱き寄せてもくれない。


 もしかして本当はあまり乗り気じゃなくて、断ることもできずにいるだけなのかもって心配になる。


 過去の男の人たちで、自分から私を求めて来ないケースはなかったので、こういう時どうすればいいのかちょっと不安。


 でも今さら後には引けないし、向こうがその気になってくれるまで……。


 嫌ではないと思うし。


 ワイングラスをテーブルの上に置いたまま、ひたすら唇を重ね続けた。


 上杉くんに、もっと必要とされたくて。
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