魅惑への助走
 「だって、私が初めての女(ひと)になれるんでしょ?」


 「武田さん、」


 気まずい雰囲気を全て消し去ることができるよう、再びその肌に熱を引き戻すために優しく触れる。


 肌に、唇に、そして……。


 「忘れられない夜にしてもいい?」


 一糸まとわぬ姿でベッドの上、上からのしかかるように獲物を押さえつける私。


 もう後には引けない。


 ただあまり類を見ないシチュエーションに、私にも不安はある。


 過去に体を重ねた男たちは誰も彼も、女の扱いに馴れた奴らばかりで。


 経験のない相手とは前例がない。


 とはいえ私のほうは、これまでの経験から何とかできるし。


 ちょっと前にSWEET LOVEで製作・発行した「初体験シリーズ」。


 女が初体験のバージョンと、逆に初体験の男に教えてあげるバージョンの二本立てだった。


 これらは私の脚本作品ではないけれど、ADとして撮影現場に居合わせたため、作業ついでにカラミを眺めながらあれこれ研究した。
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