魅惑への助走
 「あっ……!」


 もはや痛みすらも快楽。


 「武田さん」


 「……その呼び方、よそよそしいからやめて」


 「え。じゃあどうすれば」


 「下の名前で呼んで」


 一つに繋がりながら、そのような問答を続けている私たち。


 「そ、それじゃ明美さん」


 「さん、は要らない!」


 「でも」


 「明美って呼んで!」


 「あ、あけ、み……」


 これまたぎこちない。


 「耳元で囁いて。そしてそのまま続けて」


 「明……美……」


 その声が鼓膜を震わせ、それだけで体の末端にまで痺れるような快感が伝わっていく。


 肉体的に繋がっていることよりもむしろ、甘く囁かれ触れられながら抱かれているという事実が、私を溶かしていくようで。
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