魅惑への助走
 「あの……。大変ありがたいお話なんですが。私以外でもっと相応しい方がいるのでは」


 やんわりと断りたかったのだけど、


 「明美ちゃんは片桐に言い寄られて、困っていたんだったわよね。今回も親会社のDREAM WORLD SOFT(略称DWS)からの話でね」


 親会社から直々の話。


 つまりは断りにくいということか。


 子会社、すなわち親会社から金銭面その他様々な庇護を受けている立場としては。


 「安心して。常に私たちも同行するから。片桐に問題行動は起こさせない」


 「……脚本だけで、いいんですね」


 一応念を押す。


 社長の力が弱い会社だったら……性接待。


 私はとっくに生贄として、片桐に差し出されていたかもしれない。


 わが社の作品に出演してもらう見返りに。


 人気AV男優・片桐のソロ作品をリリースできれば、一定の売り上げが期待され、SWEET LOVEにはかなりの収入が見込めるのだから。
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