魅惑への助走
 「……片桐の主演作品、どんな設定がいいかしら」


 「少なくとも童貞役とか内気な役は無理ですね。全然キャラが違う」


 「確かに」


 社長も苦笑した。


 私が構想を練ってきたネタは、今でいう草食系男子キャラばかり。


 片桐には全く向いていない役柄だった。


 「向こうはどのような作品を希望しているのでしょうか」


 「詳しい打ち合わせはまだだから。近日中に面接して、希望する作品のコンセプトも煮詰めておくね」


 「お願いします」


 ……片桐にお祭りでナンパされたのは、まだ一昨日のこと。


 そしてまたもや……。


 繰り返し間近に迫る片桐からの脅威に、私はげんなりしていた。


 このまま無事に済むのだろうか。
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