魅惑への助走
 「しばらく節約生活だけど……。上杉くんが合格したら、だいぶ楽になるし」


 ふざけて腕を組む。


 司法試験合格のあかつきには上杉くんは間違いなく、私よりはるかに高い収入を得るという目論見があったので。


 今私は新車購入という、派手な買い物をしてしまった。


 「なんか水を差しちゃうようだけど」


 言いにくそうに上杉くんが口を開いた。


 「……どうしたの?」


 「俺。最近、ちょっと自信ないんだよね」


 「何に?」


 「やっぱり俺、向いてないのかな、って……」


 「え?」


 先日の模擬試験、結果が芳しくなかったらしい。


 すでに二浪していて、同期の友人はすでに合格して働いている人が多くなった。


 一方なかなか成績が伸びない自分に対して、ますます焦りが出てくる。


 二浪しても成績が伸びないのは、もう限界なのかもと自問自答しているようだ。
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