魅惑への助走
 「いやはや明美くんは、我らがDWSグループの希望の星だ!」


 DWSのお偉方の集う辺りにビールを注いで回った際、重ね重ね賞賛された。


 今回のセールスが楽しみだ、次回作も期待している、等。


 グラスにビールを注ぎ返されるため、どうしても飲む量が増えてくる。


 撮影期間中は過度の緊張と、スケジュール過多による疲労が蓄積されており、ゆっくりと酔いが回ってきた。


 こんな時に片桐に絡まれたら大変なので、酔い潰れることのないよう細心の注意を払った。


 お偉方へのお酌廻りが終わってからは、ずっと松平社長もしくは榊原さんのそばにいるように努めた。


 「大変だったね」


 席に戻った私を、榊原さんはねぎらってくれた。


 「片桐はずっとりらさんに説教されてるから、こっちに寄って来る隙はないと思う」


 片桐に狙われていることは榊原さんも知っているので、私のそばに近寄ってこないよう注意を払っていてくれた。


 ちらっと片桐の様子を窺うと。


 離れた席で、りらさんにまた怒られている。


 そばでDWSのスタッフさんも苦笑している。
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