魅惑への助走
 ……二次会はカラオケに拉致された。


 カラオケボックスというよりライブハウスのような、数十人収容可能な近場の歩いて行ける範囲の店。


 真っ先にステージに押し上げられ、歌を強要された。


 おじさまたちでも知っているようなちょっと前のヒット曲を一曲、その後もう一曲披露してきた。


 「明美ちゃんってもっと大人っぽいロックや演歌とか似合いそうだけど、モー娘。とかSPEEDとかって意外だね」


 「そうですかね。学生時代に流行ったから、昔よくカラオケに行ったんですよ」


 カラオケに場所を変えてからも、依然として私はおじさまたちにちやほやされていた。


 今日の参加者の中では私が一番年下なので、みんなにちやほやされ、甘えていられてすごく楽。


 最近なかなか、こういう体験することがなかった。


 仕事場では、早く一人前にならなくちゃ……と無理して頑張っていたし。


 プライベートでも……私がしっかりして上杉くんを支えてあげなくちゃといつも気を張っていた。


 だけどこの日は、私は最年少でお姫様状態。


 たまには至れり尽くせりされるのもいいかも、なんて実感していた。
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