魅惑への助走
 「へーっ。ボウリングとビンゴの優勝で、ようやくプラマイゼロになるくらい悲惨な毎日を送ってたんだ。オレオレ詐欺に引っかかったとか?」


 「いやいや、あんなのに引っかかるほど迂闊ではないつもりですが。……最近どうも、ろくなことがありませんでしてねー」


 ……どういうわけか、私は初対面の葛城さんに。


 日々の愚痴をあれこれと語り始めていた。


 「そっか、交通事故ね……」


 「はい。急いでいて不注意だった私が悪いんですが、なかなか保険会社との話が進まなくてイライラしちゃって」


 まずは、先日の交通事故に関する愚痴。


 人身事故ではなく物損事故で済んだものの、保険会社に電話をしてもなかなか連絡が付かなくて困惑していた。


 「広告出しまくって、顧客をむやみやたらと集めている保険屋は、自分たちのキャパ(許容範囲)を超えてしまって。契約者に対して十分に手が行き届かなくなることが多いんだ」


 「電話してもなかなか繋がらないし。通話料無料のフリーダイヤルを謳ってるんですが、全然繋がらなかったら意味がないですよね」


 時間を置いておかけ直しください……と言われても、こっちだって仕事があるし。
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