魅惑への助走
 「ここ、どこですか」


 ようやく葛城さんが高速道路を下車したのは、あまり聞き馴染みのないインターチェンジ。


 「横浜の郊外だと思うよ」


 「こんなマイナーなところで降りなくても」


 「ここだと逆側の高速入り口が、分かりやすいんだ」


 「とにかく、早く」


 夜も更けてきた。


 今逆側車線に飛び乗れば、日付が変わる前に帰宅できると期待された。


 高速を降り一般道に合流。


 しかしながら辺りは非常に物寂しい土地で、人通りどころかほとんど車通りもなかった。


 ようやくロックが解除されたので窓を開くと、草の匂いや虫の鳴き声が車内に流れ込んできた。


 「どれだけ田舎まで来たんですか……」


 「一応、横浜市内だと思うんだけどね」


 カーナビを覗き込んだものの、地図は山か森を示していて現在位置は不明。


 ようやく進行方向に信号が見えてきた。


 「カーナビあるなら、迷子にはならないと思いますが。道に迷わないうちにさっさと引き返しましょう。悪ふざけはもうおしまいです」


 あとは逆側の高速入り口から飛び乗り、東京に戻るだけだった。
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