魅惑への助走
 「もう……! 私明日仕事なんですからね!」


 どうすることもできないず、成り行きに任せるしかなかった。


 ガソリンにも限界があるので、いずれ引き返すことだろうと予測して。


 東京都から神奈川県へと入った頃。


 「あっ」


 急に葛城さんが速度を落としたのを不思議に思ったところ。


 対向車線にパトカー発見!


 赤色灯を点灯させている。


 スピード違反の車を追跡中なのだろうか。


 「おまわりさーん!」


 パワーウィンドゥを開こうとしたけれど、これまたロックされていて開かない。


 仕方ないので、窓ガラス越しに大声を出した。


 中央分離帯に隔てられ距離もあるし、風やエンジン音に遮られて当然聞こえないとは思うけど……。


 「おまわりさーん、この人速度超過していまーす!」


 「無駄だよ。聞こえるわけがない」


 「助けてくださーい! この人、私を拉致監禁しようとしています!」


 「おいおい」


 葛城さんは全く動じない。


 パトカーは当然のことながら、私の叫びに気付くはずもなく、一瞬ですれ違っていった。
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