魅惑への助走
 「明美ちゃんが彼氏持ちじゃなかったら、真っ先にお勧めしたいところなんだけどね……」


 社長のみならず、葛城さんが私にあれこれしてくれるのを目にしたいろんな人が、私に葛城さんはどうかと勧めてくる。


 「それ以前に……。葛城さんくらいの人だったら、特定の人いるんじゃないですか? 黙っていてもたくさん寄って来るだろうし」


 私には無関係であると装う。


 「それが、女性関係の噂はさっぱり耳にしないのよね。あ、男性関係の噂があるってわけじゃないけど」


 「……」


 その点が全く意外。


 私に対する接し方でも、手慣れた印象を受ける。


 たまたま「今」だけ一時的に、特定の相手がいないってだけなのだろうか……?


 私以外にも、遊び相手の女は存在しているのかもしれない。


 全く私が気付いていないだけで。
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