魅惑への助走
 ……この日はデスクワーク。


 SWEET LOVE宛に届いたメールをチェックして返信したり、ウェブサイトの更新作業。


 パソコンとにらめっこしている午後、脇に置かれている携帯電話がメール受信を告げる。


 携帯同士のショートメールだった。


 葛城さんからの連絡。


 周囲に隠して交流しているため、メールの文面は暗号状態。


 携帯電話のメーカーが同じだったこともあり、絵文字を利用してコミュニケーションを行なう。


 月の次に数字の18、そしてビルの絵文字とクエスチョンマークが書かれている。


 「今晩18時にいつもの場所でどう?」という意味。


 それに対し私は、OKマークを返信。


 今日は久々に葛城さんが時間を取れるとのことで、会おうかって話は何日か前から話に出ていた。


 どうやら急な用事もなさそうで、無事に会えることとなった。


 そして上杉くんへのメールを作成。


 「予定通り残業で遅くなります。ゴメン。何か食べていてね」


 新たに嘘を重ねることへの罪悪感を覚え、送信ボタンを押す前に一瞬ためらうものの、結局そのまま送信する……。
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