魅惑への助走
 朝。


 ちょっと離れたコンビニの前で、車を降りた。


 「じゃ、またオフィスで」


 葛城さんの車が遠ざかっていく。


 私はコンビニで飲み物を買い、それから電車に乗り出勤。


 朝まで一緒だったことを職場関係に悟られないよう、アリバイ工作は抜かりない。


 誰かに見られているかもしれないと、周囲が気になってしまうものの。


 上杉くん以外の人に見られても、何とかごまかして切り抜けられると思った。


 少しずつ薄れていく罪の意識を噛みしめながら、何事もなかったかのように職場へと向かって歩き始めた。
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