魅惑への助走
「明美、泣くのはやめて。せっかくの料理が冷めちゃうよ」
上杉くんは私の涙を止めようと四苦八苦する。
「ごめん……」
私を苦しめるのは、感謝の気持ちと言うよりむしろ罪悪感。
こんなに尽くしてもらえているのに、どうして裏切ってしまうのか自分でも分からない。
少し前まで、何とかして別れの理由を探そうとしていた自分が恥ずかしくなる。
今のささやかな幸せを、自らの手で消してしまうのはあまりにもったいなさ過ぎるような気がした。
今のままでは経済的には苦しいのは事実だけど、いずれ上杉くんもきっと身を入れて勉強に集中してくれると信じたい。
そのような可能性があるにもかかわらず、今だけで判断して将来の幸せを自分から摘み取ってしまっていいのか。
私はまた迷い始めた。
上杉くんは私の涙を止めようと四苦八苦する。
「ごめん……」
私を苦しめるのは、感謝の気持ちと言うよりむしろ罪悪感。
こんなに尽くしてもらえているのに、どうして裏切ってしまうのか自分でも分からない。
少し前まで、何とかして別れの理由を探そうとしていた自分が恥ずかしくなる。
今のささやかな幸せを、自らの手で消してしまうのはあまりにもったいなさ過ぎるような気がした。
今のままでは経済的には苦しいのは事実だけど、いずれ上杉くんもきっと身を入れて勉強に集中してくれると信じたい。
そのような可能性があるにもかかわらず、今だけで判断して将来の幸せを自分から摘み取ってしまっていいのか。
私はまた迷い始めた。