魅惑への助走
***


 上杉くんとの馴れ合いの日々、そして時々葛城さんとの浮気のスパイスをくり返している間に、暦は十二月に到達していた。


 季節はもう冬。


 私と上杉くんの故郷は雪国なので、そろそろ根雪が気になる時期。


 しかし東京は例年、初雪は年明けの一月。


 根雪になることはまずない。


 同じ日本なのに……。


 ふと空を見上げた。


 冬の青空。


 晴れているのに気温はあまり上がらず、息が白くなる。


 十二月に入り、街のあちこちではクリスマスの装飾が見え始めた。


 華やぐ季節。


 なぜクリスマスが近付くと、わくわくした気持ちになるのだろう。


 ……ただクリスマスが過ぎると十二月下旬、クレジットカードの支払期日。


 先月一挙に購入した、テレビやら電子レンジの支払いが今月訪れる。


 ボーナスももらえるので懐はいつもより余裕があるはずなものの、支払いで一気に削り取られてしまう。


 他にも光熱費や家賃などの生活費や、車のローンなど支出項目は多々ある。


 お金はなかなか貯まらない。
< 443 / 679 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop