魅惑への助走
 ……それからしばらくは、お互い今まで通り穏かな毎日を送ることができた。


 上杉くんは私に対し、経済的に依存しているという負い目があるし、私は先日の口論でちょっと言い過ぎたという反省があったため。


 さらに関係を悪化させたくないという思いが、互いを自重させていた。


 このような日々が続き、そして私の思い描いたような未来が訪れたら、葛城さんとの関係もひと時の浮気で終止符が打たれていたのかもしれない。


 誰にも知られないままに。


 ただ……、やはり私と上杉くんには、同じ未来は用意されていなかったようだ。


 少なくともこの時点においては。


 ようやく落ち着いた毎日を取り戻せたと思っていた矢先、またしてもトラブルに見舞われる……。
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