魅惑への助走
 「若い頃は苦にならなかったけどね。25を過ぎるとちょっとキツくなってきたかも」


 「そうですか……」


 私は驚くばかりで、ビールを飲むのも忘れていた。


 「一日三回くらいなんて、明美ちゃんくらいの年頃なら普通じゃない? 明美ちゃんだって彼氏とそれくらいしない?」


 「えっ。分かりません。それに私、彼氏いないし」


 「いないの? もったいない」


 そもそも私に彼氏なんてものがいまだかつて存在したかどうかさえ、不明。


 こっちは付き合っているつもりでも、向こうからしたらただの遊びだったり。


 相手には家族があるなどで、関係を公表できない間柄だったり。


 特定の男性と、彼氏として堂々と付き合った記憶なんて……一度もない。


 そんなことを考えていると、なんか空しくなってきた。


 「明美ちゃんどうしたの? 俺何かまずいこと言ったかな」


 私の表情にブルーが入っているのを、武石さんは察したようだ。
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