魅惑への助走
 「徐々に売れっ子作家の道を歩んでいるそうじゃないか」


 「梨本さんの力ですから。私の実力ではなく……」


 携帯小説をネット上で後悔し始めたのは、引っ越し作業も落ち着いた最近になってから。


 出国前に梨本さんと相談し、作品の構想もじっくり練り、下書きをある程度チェックしてもらっていた。


 いわば編集者の「お墨付き」の、ヒットするよう計算し尽されて公開が開始された作品。


 読者ウケする内容だし、キーワードに人気のある単語を散りばめて、ランキングに載るのも時間の問題だと梨本さんも太鼓判を押してくれた。


 「しかし、こんなにも早く効果がでるものなんだね」


 「なんか怖いですね。自分の窺い知れぬところで、事態は着々と進んでいるんですから」


 アイドル歌手などで、よくあるパターンは。


 歌は大して上手くなくても、プロデューサーがお膳立てし、事務所が十分にプロモーションを施せばヒットが約束される。


 私もそれと同類なのかも。


 「容姿で補えるアイドル歌手とは違い、小説はいくら裏工作しても肝心の作品が面白くなかったら、こうはスムーズにいかなかったはず。明美の作品自体が素晴らしいからこそ、順調に事が進んでいるんだ。自信持ちなよ」


 葛城さんはテーブル越しに、私を励ますように微笑んでくれる。
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