魅惑への助走
 「難しい質問だったかな? 大まかでいいから。例えばイケメンが嫌いなんてまず有り得ないよね?」


 「……何もかも、私の色に染められるような男」


 「色?」


 「私の言うことを聞いてくれて、受け入れてくれる人。従ってくれる人」


 「へーっ。明美ちゃんってSなんだ。葛城さんだったらずっと年上だし包容力もあるし、明美ちゃんを自由にさせてくれそうだしね」


 梨本さんは私が葛城さんを念頭において発言してると納得し、うんうんと頷いていた。


 「それなら話も早い。次回の相手役、すなわちヒーローも今まで同様、イケメンでS彼で、社会的地位があってセレブで……」


 「そんな男、現実世界にはほとんど存在しないし、リアリティがなさすぎてついていけなくないですか」


 今までの執筆作品に満足ができていない私は、まだ梨本さんに抵抗を見せる。


 「そりゃそうだよね。携帯小説界でウケているオフィスラブ、現実にはまず有り得ない。ある意味ファンタジー小説」


 梨本さんは苦笑する。


 「だけど現実にはまず体験できないから、みんな小説の中だけではせめて夢を見ていたいんじゃないかな」
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