魅惑への助走
 「ベッドで待ってていいよ」


 「はい……」


 私と入れ違いでバスルームに向かう葛城さんが囁いた。


 間もなくシャワーの音が響き始める。


 私は髪が少し濡れていたので、寝室に向かう前に居間のソファーに腰掛けた。


 「そうだ」


 居間の片隅にあるパソコンを起動する。


 パソコンは私の私物もあるし、もちろん葛城さんも何台か書斎に所持している。


 居間にあるのは共用で、主に調べものやCD、DVDのコピーなどをする際などに用いる。


 居間の共用パソコンが起動すると、インターネットボタンをクリック。


 起動時に表示されるのは、大手サイトのトップページ。


 真ん中あたりに検索バーがある。


 そこに「S」と打ち込んでみた。


 さっき梨本さんが、「携帯小説の相手役に相応しいのはイケメンでS彼で金持ちで地位や家柄があって……」と説明していたのだけど、その際登場した「S彼」について検索してみようと思い立ったのだ。


 S彼、すなわち「Sな傾向のある彼氏」。


 SとはSMのSのほうだけど、表示通りの「サディスティック」の定義とはニュアンスがかなり異なる。


 それをちょっと調べたくて、検索バーに「S」と打ち込んだのだった。
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