魅惑への助走
 ……。


 「ごちそうさま。美味しかった」


 やはり高級品は歯ごたえも最高で、久しぶりの牛タンに舌鼓を打った。


 「七輪の炭の始末は俺がやっておくから。明美は先にお風呂入ってて」


 「分かりました」


 「一緒に入ってもいいけど」


 「……いえ、一人で入ります」


 使った皿などを食器洗い機に入れ、洗剤を投下した後洗浄開始のスイッチを押す。


 七輪と炭の片付けを葛城さんに任せ、私は先にお風呂に入った。


 今夜は久しぶりにゆっくりできるから、きっと……。


 これから起こることを想像し、少し恥じらいを覚えた後で、薔薇の香りのボディーソープで体の隅々まで泡を行き渡らせる。


 英国から帰国した今でもなお、新婚当時から変わらぬ甘い二人の日々が続いているのは嬉しい。


 忙しくて一緒に過ごす時間が少ないこともあって、いつまでも新鮮な二人でいられるのかも……などと考える。
< 562 / 679 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop