魅惑への助走
 「椿さん」


 機会を窺い、ついにAV女優の椿ちゃんと話をすることができた。


 「あなたは……。榊原さんのお友達の、えーと、明美さんだっけ?」


 さっき自己紹介をしたので、かろうじて覚えていてくれたようだ。


 「はい武田明美です。よろしくお願いします」


 「あなた……AV関係者じゃないんでしょ? いきなり撮影現場に連れて来られて濡れ場を見学させられて、ドン引きしなかった?」


 椿ちゃんは少々自虐的に語った。


 「最初は戸惑いましたが、見ているうちに感動しました。撮影用の演技だとは頭では判っているんですが、あんなにも綺麗に演じられるなんて」


 「そう? 演じる側としてはそこまで言われると本望かも」


 椿ちゃんはまんざらでもないような表情だった。


 「初めて見たかな。私のカラミを見て泣いた人って」


 「カラミ?」


 「本番の撮影のこと。つまりセックスシーン」


 「……」


 それから椿ちゃんに、いろいろ話を聞くことができた。


 AV女優になったきっかけや、AVの仕事についてなど……。
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