魅惑への助走
 「信じられない。佐藤剣身が、明美の……」


 佐藤剣身登場分の動画が終了したので、葛城さんは先頭に戻してもう一度再生させた。


 「司法試験はどうしたんだ。……ここにいるってことは、不合格だったかあきらめたかのどっちかだとしても」


 「……復讐」


 「ん?」


 「あの人、私に復讐してるの。だからわざわざSWEET LOVEの門を叩き、AV男優になって……」


 「だとしたら、すごい根性だな」


 怯えるように胸に寄り添った私を優しく抱きながら、葛城さんはパソコンの画面の中の佐藤剣身をじっと見つめ続けた。


 「失恋して悔しかったからって、AV男優になる奴がいるなんて。いくら元カノの職場だからって」


 その時私は、別れる直前に言い放った言葉を思い返していた。


 確か……「悔しかったらAV男優になってみなさいよ!」みたいな言葉をぶつけたような記憶が。


 それは絶対に無理だろうという前提の下で言い放った言葉だった。


 でもまさか、本当にAV男優になるなんて……。


 しかも誰でもなれるような生半可な仕事ではない。


 人前で肌だけではなく、何もかも曝け出さなければならない、過酷極まりない職業……。
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