魅惑への助走
 上杉くんはSWEET LOVEのオフィスを訪ねた時、どこまでの覚悟を抱いていたのだろう。


 今までの大切なものだけではなく、これから得られたであろうかけがえのないものも何もかも失うことも承知で……。


 あのまま司法試験に合格して弁護士として活躍できていれば、全く別の輝かしい世界が広がっていたはずなのに。


 それらを全て放棄して、もう後戻りのできない世界へ……。


 「失うものすら失くした奴は、時として思わぬ行動に出るものだと言われるけど、その通りなのかもしれない」


 葛城さんが告げた。


 私と別れ、その後司法試験も結局だめだったとして、何もかも失くした時上杉くんの脳裏に何が浮かんだのか。


 これからどうやって生きていこうかと考えた時、「最後の手段」としてたどり着いたのが……AV男優となることだったのかもしれない。


 最後の手段(Last Resort)。


 そして……私への復讐となる、最も効果的な方法。
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