魅惑への助走
 「葛城さんは、佐藤剣身を知ってたんですか」


 以前は葛城さんのオフィスとSWEET LOVEは、同じビル内にあった。


 それがきっかけで、ビル内のオフィス合同のボウリング大会にて私たちは知り合い、今や夫婦に。


 ただ渡英する際、社長職は他の人に交替して、葛城さんは会長となり以前ほどは会社の業務に関わらなくなった。


 同時にオフィスも都心のさらに中心街に移転。


 そしてSWEET LOVEとの接点も少なくなった。


 にもかかわらず葛城さんは、佐藤剣身の存在は知っていた。


 「SWEET LOVE、そして松平さんが社運を賭けて売り出しているAV男優だからね。明美の元職場のことだし、気には掛けていた」


 パソコンの動画は再生を終え、DVDのパッケージを表示したまま静止状態にある。


 パッケージのデザインは…。


 『Vengeance』のタイトルの下方に、美人社長に頬を寄せる佐藤剣身の横顔がある。


 三部作なのでパッケージの三分の一のスペースとはいえ、SWEET LOVEが絶対的エースと推す専属男優だけあって、圧倒的な存在感を覚えた。


 演技経験などゼロに等しい、素人男優なのに。


 この溢れ出さんばかりのオーラはどこから来るのだろう。
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