魅惑への助走
 「借金は程なく返済できたんだけど。なぜだかこの業界から離れがたくなっちゃって」


 一度AV女優として活動を始めると、短い時間で普通のOLの何倍も稼げることもあり。


 普通の賃金で働くことが、ばかばかしく感じられるようになるとも言う。


 それは水商売に従事する人も同じだ。


 「でも。いくら時給が高くても、仕事は過酷ですよね。一日に複数の人と、その……」


 「カラミをしなきゃならない、ってこと?」


 「はい……」


 「私、“キカタン”だから。そんなむやみやたらと出演契約してないの」


 「キカタン?」


 「AV女優はその契約形態によって、主に三つに分類されるんだ……」


 椿ちゃんの説明によると。


 AV女優には三タイプ存在するらしい。


 まずは「企画女優」。


 これは複数名で、企画モノに出演するAV女優を言う。


 オムニバス版というか、作品一本で複数の女優のカラミが堪能できるので。


 AV女優一人一人の存在感は薄くなり、周囲にもバレにくいという。


 ただしその分報酬は少ないので、出演本数をこなして稼がなければならないらしい。
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