魅惑への助走
 次に、椿ちゃんが属するカテゴリである企画単体女優、通称「キカタン」。


 こちらは企画モノの作品に、単独主演することが可能。


 複数メーカーの作品で主役を張れるので、現場をこなせば企画女優よりは何倍も稼げるらしい。


 そして……AV女優界の頂点に立つのが、「単体(たんたい)」。


 AVメーカーと専属契約を結んだ、プロフェッショナル的存在。


 契約によってそのメーカーに縛られている分、ギャラは跳ね上がる。


 ただしよっぽどのルックスレベル、もしくは演技力、タレント性がなければ、易々とは単体女優にはなれない。


 「単体になれればもっと待遇はいいとは思うんだけど。契約に縛られて、もう松平さんとも仕事できなくなるしね」


 「ここでのお仕事、お気に入りなんですか」


 「うん。女性目線の作品が多いし、男社会とは違うから、無理難題吹っかけられることもないし」


 「同じアダルトビデオでも、製作陣が女性なだけでだいぶ違うんですか」


 「違うわよ。……さっきの撮影の際、装着現場見た?」


 私は無言で頷いた。


 武石さんが馴れた手つきで、さっと避妊具を取り出して装着するのを目にした。


 「普通の男向けの作品だったら、装着シーンは絶対映さないんだよね。男が萎えちゃうからって理由で」
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