魅惑への助走
 恋愛小説家は皆、恋愛に飢えている独身者、もしくは結婚生活に欲求不満を抱いている者たちばかりとは限らない。


 普通に結婚して家庭を持っていても、小説を書くという行為を割り切ってきちんと作品を出している作家だってたくさんいる。


 なのに私は……それができない。


 けじめをつけられず、中途半端な気持ちで仕事に臨んでいる。


 もしかして私、向いていないのかも。


 そんな弱気が時折顔を見せる。


 「ありとあらゆるシチュエーションを想像して、現実の自分とは全く違うキャラクターになりきって執筆するのも大事。それができないと出す作品出す作品、全部私小説状態……同じような主人公の同じような話ばかりになってしまい、それこそ読者に飽きられちゃうんじゃないのかな」


 梨本さんの言葉が、胸に染みる。


 最近の私、どうも想像力が低下している気がした。


 昔に比べてあまり本も読まなくなったし……。


 これからいいものを書き続けていくためにも、もっと修業が必要なのだと再確認させられた。
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