魅惑への助走
 「孤独を抱えた人も多いでしょうね」


 「そう。それで金目当てに群がってくる男に騙されたり。ホストに貢いじゃうって子も多い」


 「悲しいですね。お金目当てだなんて」


 「単体の子ともなれば、契約の絡みで撮影は月に一回とかだし。あとはイベントに出席とかもあるけど、拘束時間の割にお金をもらえるから、孤独を埋めるために豪遊しちゃうんだよね」


 何となく、分かるような気がする。


 寂しい時、優しくしてくれた男の甘い言葉に、つい騙されてしまうことって多々ある。


 たとえそれが偽りだと気付きながらも。


 「でも私は、くだらない男に本気になって、お金と時間を無駄にしたくない。この仕事が続けられる間は何とか頑張って、引退後の第二の人生のためにお金をためておくんだ」


 その言葉はかつて、信じた男に裏切られ傷付いた経験があることを窺わせた。


 だからこそもう二度と椿ちゃんは、そんな思いはしたくないと。
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