魅惑への助走
***


 「偽装……離婚?」


 葛城さんの提案を、私は復唱する。


 「そう。名案でしょ?」


 「でも偽装離婚って普通は、借金などから逃れようとか、生活保護や母子手当てを不正受給しようとかいう目的の人たちが行なう、どちらかといえばアングラな手法……」


 巷でちょくちょく噂に聞くのは。


 片方がこさえた借金の返済義務が、もう片方へと及ばないようにするために、離婚すなわち絶縁を装うパターン。


 あとシングルの子育てという家族形態にして、生活保護受給を目論むケースもあると聞く。


 いずれにしてもあまり大っぴらにはできない、偽装離婚という手段。


 「状況は違えど、互いの生活のためには婚姻関係を継続不可能、だけど別れたくない人たちが望む道。それが偽装離婚とも言える」


 葛城さんがサッカークラブのオーナーに無事就任する夢と、私がSWET LOVEに現場復帰するという夢とは両立できない。


 互いの夢をかなえるために、表向きは婚姻関係を解消しようという結論に達した。


 それはすなわち……偽装離婚?
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