魅惑への助走
 ……。


 「司法試験か。法学部だったもんね」


 先ほど「勉強」と話していたのは、それだった。


 上杉くんは司法試験合格目指していると話してくれた。


 しかし現在、すでに二浪していると。


 高校時代の成績は、クラスでトップクラスだったのに。


 その後、弁護士の数を増やすとかで、司法試験はかなり受かりやすくなったと聞いているけれど。


 当時は制度改革以前であり、合格できるまで浪人をくり返すのもよくある話だった。


 「やっぱり難しいから」


 三度目の試験は、来年の五月。


 それまでまた勉強の日々と語っている。


 「武田さんは、卒業してすぐに就職したんだね。どんな仕事しているの?」


 「ん? 私? 今は映像製作関係で。卒業後就職浪人期間はあったけど」


 「そっか。有名大学出ても、就職先が降ってくるようなご時世じゃないからね。でも今は正社員なれてよかったね」


 ついごまかしてしまった。


 女性向けAV会社に就職して、AV作品のシナリオを執筆しているとは、いきなりは打ち明けられず……。
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