魅惑への助走
 「あ、次のドリンクは何にする?」


 「ありがとう。でもサラダバーもおかわりしたいから、自分で行く」


 「了解」


 上杉くんって、まめな人だと思った。


 オーダーする際もメニュー表を見やすい角度にしてくれたり、ドリンクバーが空になったら、まめに気づいてくれておかわりを持って来てくれたり。


 漫画喫茶からそう遠くない、ファミリーレストランの窓際の席。


 二人ともハンバーグセットに、おかわり自由のドリンクバーとサラダバー。


 上杉くんは浪人中で、自由になるお金があまりないらしく、このようなおかわりし放題のほうがありがたいと話していた。


 そして何時間もの間、私たちはその席で語り合い続けた。


 地元の話や高校時代の話、大学進学後の話などいろいろ。


 私の現在の仕事だけはタブーなので、それは悟られないように何とかごまかした。


 話が弾む。


 高校時代、ろくに接点もなかったのが嘘みたいに。


 話題が尽きることのないまま、夜も更けていった。
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